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2005.05.09

■「半島を出でよ」村上龍

hanto
ほぼ発売日に買った。チラリとは読んだが「これ登場人物が多すぎる」とおもって地下鉄読書のような細切れには向かないと思い、大型連休中に上下巻、まさに悶絶しながら一気に読んだ。以下、感想。
ネタバレ注意!

 まず「今そこにある危機」を題材にエンタテイメント色を織り交ぜ、果敢に挑んだ著者に喝采を送りたい。とはいえ 麻生幾「宣戦布告」の二番煎じ評判を封ずるために何をテーマにしたかがこの小説の評価の分水嶺になると思う。僕はそんなことどうでもいいけど、最初にでた「宣戦布告」のインパクトはすごかった。
 この小説では2008年4月に北朝鮮の脱走兵による「ある衝撃的な出来事」が起こる。
 憲法改正はまだ、首相は民主党党首、米国の国債がなぜか暴落し、我が国は未曾有の経済危機を迎える。失業率は10%を超え、ホームレスがわんさか、若者の凶悪な犯罪件数が相次ぐというJMM村上流ありえそうなプロット。

 「宣戦布告」はメインステージは若狭湾と首相近辺であったが、「半島を出でよ」は福岡がメインで首相近辺、内閣危機管理のセクションは上巻の一、二章が当てられるのみだ。
 とにかく人物の説明が詳細かつ長いことはリアリティを持たせるためかそれともシンプルな小説の上げ底かと思うくらいだ。この小説には複眼的というか主役が誰かはっきりしない。「ある衝撃的な出来事」に日本人がそれぞれの立場・背景でどう反応するかが見どころといえば見どころ。

 その小説技法には一方の北朝鮮の一人ひとりの人物背景にも現れている。キムとかチョとか同じような名前が多くて最初のうち訳がわかんなくなったけど、描写は詳細。だから、日本人より北朝鮮人の方に感情移入させられそうで苦労した。それはなぜなんだろうと自己分析すると、小説の中でも問題を抱える日本にいやけがさしたというか、北朝鮮の兵士のように最優先事項を決めて後は全く無視という姿勢にわずかだが心を動かされた。

 小説を読んだ方は僕の様な気持ちになった人も少なくないと思う。そこが村上の一本勝ち。
 「  」書きのない台詞回しは村上特有の手法だが、ここに村上自身の考えが織り交ぜられているのが好き嫌い分かれるところ。

 たとえば、北朝鮮のある幹部の「日本は沖縄以外に侵略されたことがないから、敵と基本的にどう向き合えばよいかわからない」とか、ある官僚(だったかな)の「政府は最優先事項を決められないから、ごてごてにまわるんだ。少数の犠牲をもって大多数の命を救うという立場を貫き通さないからこういうことになるんだ。」という台詞は村上のコラムで何度となく読んだ内容だし、

 「今そこにある危機」は現実のものになって9人(だったかな)の北朝鮮の脱走兵が漁船で、福岡沿岸の島(玄界島?)の沿岸に着くところから始まる。脱走兵は果物を売りに来た親子2人を手刀で殺し、フェリーで福岡に渡る。プロ野球の開幕戦が行われる福岡ドーム占拠のためだ。武装しているとはいえ、わずか9人で福岡ドームを占拠した北朝鮮の脱走兵はある要求を日本政府に送った。
 日本政府は事実関係とくに国家が責めてきたのか単なるテロかという事実関係確認、さらに内閣の危機管理チームの集まりの悪さ要領の悪さに手間取っている。それも北朝鮮の脱走兵たちには想定内。要求の一つ「領空を空けよ」の意味すらわかんないまま、人質をタテにとられてしまっているがゆえに、それをのんでしまう。そこへレーダーに引っかからない複葉機(!)で次々に福岡へ数百人規模の脱走兵と称する兵士が飛来する。

 とまあ物語はこんな風に始まるのだ。あとは文庫本でも中古本でも、でない。読む価値はあるから、新品買って(笑)!

 ついでに「諸君」6月号に石破茂(元防衛庁長官)の「これは決して夢想ではない」と題する勇ましい書評が乗っているから。

 上巻の物語は政府が「あるデマコーグ」を信じて福岡を封鎖してしまうところで終わる。

 これを読んで感じたことはまず村上が言わんとしている「最優先事項を決める」ということを怠ると国家的な危機にどういう風にことが運ぶか、そこのところにディテールもろともじゃないが、僕はリアリティを感じた。これは憲法とか日米安保の問題以前のような気がする。阪神淡路大震災のときも政府は最優先事項が決まらず、多くの生きるであろう人々を失った。

 JR西日本が事故を起こした車両に乗っていた乗務員の報告を無視し、一度は早期復旧をまぬけにも幹部たちは考えた。

 あと後半の感想は気が向いたら書くのでここでひとまず終わり。
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