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2005.05.11

ATSの説明が知りたい!

 このエントリーのタイトルを最初「ATSとATCの違いぐらいちゃんと報道しなきゃダメだよ。」としようと思ったが、これを読む限り新聞やTVの枠じゃ扱えないっつーか相当の鉄道マニアか鉄道に関わる設計のプロでもない限り、全然わかんないというか、日本国民で十分に説明できる人はおそらく数十人ってレベルじゃないかとおもったわけ。

 だとしても実は一番問題なのは、ATSとATCとの本質的違いを説明し、どう安全性に影響を与えるか、あったとしてもこういうケースではリスクがあるよ、とか報道しないと、「ひとまず安心」との誤解を与えはしないか、という点である。

 おっさんがお茶の間(死語)でTVをみて「ATSだかATCだかわかんねえけど、何でも機械に頼るとろくなことにならねぇ。やっぱり大事なのは人よ。」と突っ込み入れるのは勝手にやれば、という感じなのだが、現実はあなたみたいなバカの想像を遙かに超えていると小一時間。。。

 まず用語である。鉄道について全く素人だが(他の多くの報道に触れている人もそうだと思う)、せめて自動列車停止装置とか自動列車制御装置とか使わなきゃ、少なくとも何のことかわからない。
「コンビニで金おろせるようになって便利だなー」
「それはATMだろ」

 これを見ている人が例えば個人投資家でATC部品製造会社の株を買いまくるってのならわからんではないが、一般の読者なり視聴者なりを想定すれば、国は安全対策に乗り出したという茶飲み話のレベルの情報をしりたいのではないと思う。とくに福知山線沿線の人や遺族の方々は。

 北川国交相が「新型ATSを導入させなければ運転再開はありえない。」旨の発言から、相次いで報道されたが、旧型ATSと新型ATSではどう違うのか、どこが安全なのかを国も説明した形跡はないし、既成メディアも国の説明をただ「たれながし」にしているだけ。北川国交相も事務方とよく調整した発言でないことはここで書かれているけど。

 であれば、JR西日本の利用者が「これまでより安全になった」とどうして信じればよいのかがよく分からない。既成メディアもJR西日本をあれだけバッシングしておきながら、安全に対する目利きは十年一日のごとく何の成長もしていない。それどころか、どうもボーリングとかゴルフコンペの話題で延々お茶を濁すあたり、国の社会的責任に対する目をそらそうとしてるのか。

 あたらしいATC・ATSのはなしより引用。
 

 運輸省(当時)は昭和30〜40年代前半の事故の多発により、昭和42年の通達11号で「自動列車停止装置の設置について」という通達を出している。
 この通達ではATSの要件として「速度照査機能をそなえ」ることが定められていたため、国鉄とは異なり機能の高い「速度照査式ATS」が導入されることとなった。
 「速度照査機能」といっても点制御と連続制御までの規定はなかったため、各私鉄で適宜の方式のATSが導入されることとなったが、「連続制御」の「ATS」は、機構的には「ATC」とほとんど変わらず、その運転取り扱いが地上信号主体か車内信号主体かだけという事象も発生し、一方で、速度照査がなく確認扱い後は停止機能が失われる国鉄ATSと、ATCの機能に近い連続速度照査形ATSが、同じ「ATS」を名乗るなど、よりいっそう概念の複雑化を招いている。

 つまり、国鉄と私鉄の法規の違いが問題(といっても定義レベルの話)を複雑にしていることがわかる。問題は国鉄が民営化して、JRになったとき私鉄と同じ民営会社でも、事実上、差別化したことだ。
昭和42年の運輸省が民鉄にだした「通達」の一部を引用する。

 自動列車停止装置の設置基準  最高速度が60km/hをこえる地方鉄道及び新設軌道の線区において、次の各号の一に該当する区間には自動列車停止装置を設置しなければならない。 (1) 列車の運転回数が1時間当り20回以上(片道)の区間 (2) 列車の運転回数が1時間当り15回以上(片道)であって、かつ特急、急行、普通等の2種別以上を運転している区間 (3) 列車の最高速度が100km/h以上の区間 (4) その他運転保安上特に必要と認められる区間


 国鉄分割民営化に伴い、地方鉄道法に基づいて営業を行っていた民鉄各社と、独自規定を持っていた国鉄の、規定の統一化が図られる。即ち、在来鉄道用の「普通鉄道構造規則」「鉄道運転規則」と、新幹線鉄道用の「新幹線鉄道構造規則」「新幹線鉄道運転規則」が制定された。従来、通達形式で処理されていた自動列車停止装置・自動列車制御装置などは、この統一規則で初めて明確に定義づけられた。

 あくまで定義レベルで規格が統一されたに過ぎない。民鉄は粛々と設置したと思われるが、JRのATS設置は義務づけられず、今回の悲惨な事故を招く結果となったと個人的には疑いをぬぐえない。

 引用ばかりで申し訳ないが、このサイトから最後に象徴的な出来事について書いたものを。

 以前、日比谷線の脱線衝突事故が発生したときのニュースでキャスター(アナウンサー)が「ATSは働いていたんですか?」という的はずれのコメントをしていたことがある。たぶんこのキャスターは「ATS」という言葉は知っていても、そのATSが何であるかを詳しくは知らなかったようだ。報道機関なのだからあらかじめ識者に尋ねるなり調べるなりしてコメントすべきと思うが、とりあえず、知っていたATSという単語が意味もわからず口をついてしまったのだろう。難解な専門用語を発すれば「さすが目の付け所が違う」という印象を視聴者に植え付けることは可能だろうが、それ以上のものは何もない。  裏を返せば、報道機関のキャスターでさえ、ATSがあれば、すべての事故が防げると勘違いしているのである。キャスターは鉄道の知識が特別あるわけではない。ブラウン管から消えれば一般人である。一般の人のATS・ATCの概念というのはむしろこのキャスターのように漠然としたものであることがむしろ当たり前だろう。

ほらね。

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コメント

>■どんどん大きくなる思考の「保留」を、いくつもブラ下げて、前進しているの
>か、後退しているのか、交代させられているのか、しゃがみこんでいるのか・の、>日々です。
激しく同意。
blogという名の日記をつけているのも、
その時興味を持っていたものの備忘録。そんな印象を時々感じるのです。

>「人間が関わるから事故が起きる。できたらすべて自動化してしまいたい」
人間が関わるからスケープゴート探しになる。できたらすべて機械のせいにしてしまいたい。
その機械は人間がつくったもの。どこまでいっても入れ子構造のマトリョーシカ。
唯一の違いは責任分散か。
車を「事故自己責任」で運転している僕たちは曲芸師だねぇ。

投稿: akiller | 2005.05.28 11:33

■どんどん大きくなる思考の「保留」を、いくつもブラ下げて、前進しているのか、後退しているのか、交代させられているのか、しゃがみこんでいるのか・の、日々です。
しかし、それでも時々、その膨大なる「保留」コレクションから、気になるいくつかを、つまみ出しては灰色の脳味噌の天日にさらしてみるのも、また人生。

>「人間が関わるから事故が起きる。できたらすべて自動化してしまいたい」

■これは私の古い仲間が彼のブログに書いたものからの抜粋です。
ここ、

http://chk.livedoor.biz/archives/2005-04.html

■akillerさんの「ATSとATCの違い」へのコメントが映画『コーヒー&シガレッツ』のものより少ないのですが、どうも気になっていましたので、上記のブログの紹介にて、また一つ「保留」を増やさせていただきました。
がくっ。

投稿: 久保AB-ST元宏 | 2005.05.27 11:57

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