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2005.01.17

昨日「北の零年」を見てきた。

komatsubara-tae ネタバレ注意!

 幕末から維新にかけて、淡路島の稲田家を巡り、開拓を夢見て時代の波に翻弄される武士たちの物語。上映時間2時間55分、豪華俳優陣を出演させた名実ともに大作。

 開拓することになった背景は、庚午事変(別名稲田事変)。淡路島に1万4500石をもつ稲田家。本来徳島藩なのだが、海防と勤王派の面でずいぶんと朝廷側を支えた。明治政府はなぜか当主は一等士族にしたが家臣たちは卒族にしかなれなかった。これを不服とした稲田家は独立しようと画策する。

 この動きを察した徳島藩は稲田家当主の家を焼き払い、多数の死者を出す。明治政府はこれを厳しく処罰し、徳島藩側の首謀者を死罪にしたり、流刑にしたりした。一方の稲田家にも北海道日高の静内の開拓を命じたことからこの物語は始まる。

 志乃(吉永小百合)は、淡路島にいるとき寝過ごし、娘に起こされて浄瑠璃に遅れそうになる、ある意味でおおらかな妻。それが静内に行ってからは、先に行っていた夫の小松原英明(渡辺 謙)に合うや否や、自ら持ったことのない鍬を持ち出して、畑仕事に精を出す。志乃は苦難に耐えれば耐えるほど、存在感を増してくる。この辺吉永小百合の演技力が光る。

 志乃と英明の一人娘多恵(大後寿々花・石原さとみ)の演技は健闘賞もの。あたし石原さとみのファン♥になります。多恵はひもじいのに文句一つ言わず耐えて、許嫁の死ぬ間際、「花を見たい」の一言を受けて、冬の大地に花模様の着物を裂いてつくったしだれ桜は本映画の前半のクライマックス。

 二年目の春、英明は当主の到着を今か今かと待ちわびる。そこへ当主が新しく静内にこさえた御殿に来て「廃藩置県が成立して、静内の地は、開拓府の直轄領として召し上げられる。」と言い残し、早々と御殿を後にする。
 呆然となる家臣たち。「君主などいらんわ!」と髷をばっさり切り落とす英明。そこへ「ええじゃないか」の大合唱。踏みつけられる手作りの浄瑠璃人形。浄瑠璃人形はたぶん忍耐を象徴している。

 札幌に行けば、寒冷地用の稲が手に入ると出かけていった英明を多恵が見送る。「田植えまで間に合う」といったのだが、冬になっても帰ってこない。

 開拓府の直轄地になって扶持米がでるようになった。が、稲田家一族は受け取ろうとしないのをいいことに持田倉蔵(香川照之)は一商売を思いつく。扶持米を一手に引き受け、稲田家を配下に置こうとするばかりか、志乃に言い寄る。と、アシリカ(豊川悦司)に助けられる。アシリカは謎のアイヌでどうやら妻と娘を亡くしたらしいのだが・・・。

 二年目の冬。志乃は多恵を連れて札幌に向かって無謀な旅をする。案の定雪の中で動けなくなっているところをアメリカ人に助けられる。その名はエドウィン・ダン

 五年後、馬をさっそうと駆る志乃。娘の多恵は大きくなって、未だ戻らぬ父を待っている。志乃の育てた馬で農業の生産性は著しく上がった。一方持田倉蔵は開拓府の静内出張所に徒長として赴任。稲田家の元家臣をあごで使っている。
 そこへ呼び出される志乃。西南戦争の官軍の軍用馬が足りず徴用しろとの命令。断る志乃。そこへ開拓府のお偉い役人が帰ってくるのだが・・・・。まだまだ後半にかけて見どころを書きたいのだがひんしゅく買うのでやめておこう。

 後は見てのお楽しみだが、石橋漣司、柳葉俊郎、石田ゆり子、吹越満、平田満が脇をがっちり固めている。脇役もぴたりとはまっている。志乃役を演じた吉永小百合は自身111本目の映画。60歳の齢にたっしたとは思えぬ、凛とした姿に不覚にも涙をぽろぽろ流して泣いてしまった。吉永小百合は遅ればせながらはじめてスクリーンで見るが、いい顔をしている。

 「北の零年」は、文句なく今年のベスト3映画にはきっとなるだろう。監督は今をときめく行定勲。岩井俊二作品(スワローテイル等々)で助監督を務め、セカチューで有名監督の仲間入り。「北の零年」では北の厳しい自然を情景を美しくも丁寧に描き、巨匠の第一歩を歩むことになるに違いない。これまでもこれからも目の離せない監督である。


*「御雇い外国人」エドウイン・ダンは、農業・牧畜のスペシヤリストとして1873年(明治6年)、25歳の時米国オハイオ州から来日。1875年(明治8年)5月、函館七重官園に約4ヶ月の長期出張。この間に札幌官園、新冠牧場を視察し意見書を提出、北海道畜産事業指導の歩を踏み出す。ここで津軽からきた「山田つる」を見初めて結婚し、ダンに日本永住を決意させた。

北の零年公式ホームページ

北海道新聞の「北の零年」特集
 

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コメント

■今、テレビで映画『あずみ』の放送が終わりました。チラ&チラ観ていたら、絵は面白かったですね。でも、ずーーっとブラウン管の前に座っていた36歳主婦は「面白くなかった!」と言ってエンド・ロールが上がるテレビのスィッチをブチッ!と切っておりました(笑)。
ああ、同じ監督の『ゴジラ』も、くだらねーかったな。と、思い出しました。

>良い作品の監督の助監督をやっていたからこのような素晴らしい映画ができたんですねぇ。

■かならずしもそればっかではないでしょうが、そーゆー「魂のリレー」(がくっ)が、映画制作というアナクロで体育会系な大所帯では必要なんでしょうね。

■そんな星が私に向かって、こっそりウィンクする昨夜、指折り数えましたら、私が去年、映画館で見た映画は42本でした。映画館から120km離れた田舎に住む42歳の中年オヤジが見た数としては、多いのでしょうか?少ないのでしょうか?
■そこで、昨年から始まった『第2回★共犯映画祭』のランクをつけようかと、アカデミー賞協会の要請で取り組んでおります。レオ様も、ヨン様も、ベッカム様も、ノミネートされておりませんが(笑)。
■んで、akiller様の昨年見た映画の第一位は何ですか?
参考にさせていただきたく候です。

投稿: 久保AB-ST元宏 | 2005.03.02 22:56

「世界の中心で愛を叫ぶ!」の監督さんがこの監督さんだとは知っていたけど、岩井俊二監督作品の助監督さんを主にやっていたのは知らなかったなぁ。良い作品の監督の助監督をやっていたからこのような素晴らしい映画ができたんですねぇ。

投稿: | 2005.02.27 22:02

あははは。共犯新聞のインタビュー笑ってしまいました。
感想も地方に住みながら(失礼)年間映画館で30本も見る映画通らしいですね。
行定勲は、旧来日本映画の悪癖であった(例えばレディ・ジョーカー)不必要な説明・不十分なシーン、を改革してくれると密かに期待しています。

投稿: akiller | 2005.02.11 14:04

■akillerさんに「今年のベスト3映画にはきっとなるだろう」と言われれば、観るしかありませんな(笑)。
私の感想は下記です。

■吉永小百合も、あの年齢で強姦の対象になる
など、映画ならではの魔法を堪能した。監督の
行定勲は岩井俊二の助監督をしていたがなん
だか日本映画のまったく新しい系譜が見えてき
たような気がした。つまりこの映画には香川照之
が強姦する黒木和雄監督『美しい夏キリシマ』、
農民のクワの音という北野武監督『座頭市』など
の過去の映画へのオマージュを私は連想した。
それらは「引用」ではなく伝統への「すりより」で
もなく新しい系譜を築こうという潔い「決意表明」
だ。つまり、私はこの映画を世間が評価している
ように「大傑作」とは見ていない。むしろ、欠点も
含めて日本映画の未来を見せてくれた偉大な
る通過点であると思うのだ。次回作こそ楽しみ。

■また、『共犯新聞』1面に映画『北の零年』の主演俳優への独占インタビューをしています。
北朝鮮サッカーでも見終わった頃に、観ていただければ、これ幸いなりけり。

投稿: 久保AB-ST元宏 | 2005.02.09 19:42

はじめまして。
すみませ~ん!!間違えて前日の海老沢会長の話にTBのコメント載せてしまいました…
削除して下さい。m(_ _)m

投稿: *みゆき* | 2005.02.08 11:17

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