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2004.06.08

■都市の経済学/ジェイコブス(その2)

 その1では、日本の北部と南部は、自ら生産し、自都市へもまた周辺他都市へも、供給することがないってことがわかった。つまり、こういうことだ。札幌市(札幌圏と言い換えてもいい)は、実は道都であるが、いわゆる移輸出品が極めて少ない。

 ジェイコブスは、金融や行政中心など、中枢管理機能(首都機能)についても述べている。これは、衰退の取引をつづけることによって、停滞する都市の本質的な原因を隠す、ということだ。つまり、補助金行政とか植民地の経済的な疲弊に通じる取引だ。

 東京を中心とする都市地域は、少なくとも70年代後半までは、他に比べようもないほど、極めて多様に輸出品を生産し、全国・海外に供給してきた。その頃の札幌市は、というと、北海道開発ブームによる建設投資と中央企業の支店出店にわき、全道から労働者を集めて、これまた他に比べようもないほど発展した。冬期オリンピックに関係する投資(地下鉄とか幹線道路)もそれに輪をかけた。

 現在、東京を中心とする都市地域は、かつてほどの輸出都市としての勢いは、たぶん、ない。
 しかし、あらゆる富が集中するお陰で、極めて効率的に税が集められ、それは、札幌市・北海道も含む地方に投入されてきた。
 この暴走が、東京、ひいては日本を疲弊させる、衰退の取引の結末だ。都市の財政(国家財政)はほとんど70年代後半から赤字続きであり、先食いに先食いを重ね、現在では、例えば国債と政府債務保証の残高で言えば700兆円に上る。

これをどうすればよいか、俺にわかるわけがない!

で、札幌に戻る。それにしてもわかるわけはないが、ヒントはあるはず!

第14章「漂流」に進む。

『日本の人類学者梅棹忠夫によれば、日本人は、歴史的には「確固たる目的」「決然たる意志」によって行動するときよりも、経験的、実践的な仕方でなりゆきにまかせて行動するときのほうがうまくいった、という。梅棹は、いわゆる「漂流の美学」が日本人に特有のものであり、それが日欧の文化の大きなちがいの一つであると考えているのである。』 (中略) 『成功につながる経済発展は、その本性から言って、目的志向型であるよりは修正自在型にならざるをえず、発展過程の中で、その時の都合や経験に応じて替わって行かざるを得ない。それは一つには予測不可能な問題が発生するからである。・・・これを敷衍して、発展とは、インプロビゼーションを伴う前例のない仕事への「漂流」であるということができよう。』 (中略) 『MITのシリル・スタンレー・スミス名誉教授の指摘によれば、歴史的には必要は発明の母ではなかった。つまり必要は、都合のよいときには発明を取り入れ、それを改良し、新しい用途を加えるが、しかし発明のルーツなどどこにでもあるのであり、好奇心や、とりわけ、スミスの言う「審美的好奇心」のような動機の中にそれが見いだされる。 (中略)

行政がやる商売がいつも失敗に終わる理由がわかるではないか!予算と計画に縛られ、最初に決めたことを柔軟に変えながら、時に修正しつつ、発展させることができないからなんだ。

話がそれた。次に進む。

『「大きなことはすべて小さなことから成長する」とスミスは述べているが、それに加えて注意深く、「しかし、新しい小さなことは、実際的効用よりも審美的評価といった理由から大事に育てなければ、周囲の状況に打ち消されてしまう」と述べている。梅棹の「漂流の美学」が思い起こされる。』

ジェイコブスは接着剤はもともとサンドペーパーを作るために、今の3Mが発明した、という話を例示する。この手の話がジェイコブスは好きみたいだ。
 接着剤はサンドペーパーよりも、もっともっと多用途に用いられ、発展の素晴らしい原動力になったのだ。
こんな、小さな発明と応用の繰り返しが、経済の発展につながるというのが彼女の主張で、次には、最新の著作「経済の本質」への序章を感じさせる次の記述につながる。

『経済活動・・・の中にも秩序はある。・・・そこに存在する秩序は、生物学的進化に似たもので、かりにそこに目的が存在するとしても、われわれにはそれが見えず、目的はわれわれ自身だと考えて満足するほかないようなものなのである。自然の生態環境と経済の中の基礎過程の多くは、驚くほど似ている。 (中略) 言い換えると、他地域のためだけでなく、地元の住民と生産者のために多様に豊かに生産する経済は、供給地域、住民排除地域、移植工場地域のような特化された経済よりも、暮らし向きがよいということである。』

追記:2004年12月27日
ジェイコブス再評価の機運が盛り上がっているそう。稲葉振一郎・地図と磁石 第2部 政治学的公共性論

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