« ガラスのピラミッド2 | トップページ | 自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟 »

2004.05.12

■都市の経済学/ジェイコブス(その1)

 「アメリカ大都市の死と生」ばかりがとりあげられるジェーン・ジェイコブスだが、これも名著だと思う。しかし現在のところ絶版。
 TBSブリタニカから中村達也・谷口文子訳によって1986年、バブル前夜に書かれた本だ。
 僕は本を読むときに、参考文献を見るくせがあり、尊敬するジェイコブス女史のこの本が引用・参照されているのに気づき、探したのだが、大学(北大・・・・とほほ)図書館ですらみつからず、「復刊どっとこむ」にアップするもらちがあかず、「日本の古本や」で定価以上のお金でやっと手に入れた。
 読みこなすのに相当の経済学の知識も必要に思われるが、それがなくても、都市の盛衰に興味がある人をうならせるだけの内容だ。それにジェイコブスは冒頭からマクロ経済学自体を徹底的に批判している。
 物価高と高い失業率というスタグフレーションは、マルクスなりケインズなりアダムスミスの理論の延長からは導き出されなかった、ということを指摘し、具体的な例証を上げて、考察と分析に入る。
 ここでのジェイコブスの主張は、一国の経済発展および衰退のダイナミズムは、都市のダイナミズムに起因するのであり、それぞれの都市が互いに創造的、共生的なネットワークをそなえて、都市住民の創意を生かすようなインプロビゼーションが繰り返される場合には、その国は発展し、成長する。それがない場合には遅かれ早かれ衰退するというのだ。
 そんなインプロビゼーションを繰り返し貧困から脱却し、めざましい成長を遂げた「都市」として、東京周辺の都市地域を例示する。
製造業のネットワークが発達し、それまで欧米から極めて厳しい為替条件で手に入れていた工業品をどんどん輸入代替しはじめ、国内に猛烈に供給しはじめたことがその発展の条件だったという。他に、同様の発展をとげた地域、逆にネットワークが乏しく衰退の取引によって没落していった地域も具体的に例示し、主張を裏付けする。
 第13章に日本について、また北海道にとっての極めて示唆に富む記述があるので引用する。
「日本のように繁栄している国でさえ、諸地域間の不平等という問題を抱えている。・・・しかし、日本列島の北部および南部では、事情が異なる。・・・それらの都市は、広範な都市製の輸出品(移出品:筆者注)の代替を得意としていない。輸入代替都市でないために、それらの都市は重要な都市地域を生み出さない。したがってこうした周辺地域は、他地域のためだけでなく地元の生産者と住民のためにも豊かに多様に生産することがない。
(中略)
 輸入代替都市がないことの結果として、仕事を求めている若者の多くが、これらの地域を完全に出て行かなければならないということがある。日本の北部と南部の役人は、地元の仕事を増やすために、他の国と似たような行動をとる。彼らは遠方の都市、主として中央日本の都市からの移植工場の誘致を競い、また最近は外国企業の子会社の誘致も増えている。世界中の他のどことも同じように、移植工場に対する需要は供給を上回っている。
(中略)
 もちろん、その解決方法は、これらの地域においても、輸入代替都市が出現することであろう。しかし、・・・いまではもう、成長を阻まれた地域において輸入代替都市となる可能性のある都市は、中央日本の発展した大都市からきた製品に対する関税またはそれに相当するものを必要とするだろう。それはちょうど、かつては中央日本の都市自体が、当時の高度に発展した欧米諸都市からの輸入品を代替しつづけるために関税を必要としたのと同様である。
 日本の北部および南部の諸地域がそれぞれ個別の通貨をもっていたならば、それによって関税や輸出補助金に相当するものを自動的に得ることができただろう。これらの地域の農業輸出品によって、こうした通貨の価値が極端に歪められるなら実際に関税が必要ともなろう。しかし、個別的な通貨及び関税を賦課する能力は、・・・ともに新しい主権、すなわち単一の統一主権にとって代わる複数主権を意味するだろう。しかし現実には、単一の統一主権が存在するということは、これらの都市が中央日本に比べていつまでも成長が遅れているのがほぼ確実だということである。」
 だいたい、ここまでが、まず疑いのない精緻な分析部分だ。その後、理論上、衰退を避ける方法を述べているが、それはまた後にする。

|

« ガラスのピラミッド2 | トップページ | 自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟 »

コメント

大農場もこれからは国際化するべきかもしれない つまり農場を一カ所でなくたくさん持つのである 本社農場では農業の研究所でありその技術が各農場で生かされる そうすれば農業会社はどこまでも発展するのであるしかも外国にも農場を発展できる 宇宙時代農業会社も国境はないかもしれない

投稿: 増田二三生 | 2008.03.23 18:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/19542/579732

この記事へのトラックバック一覧です: ■都市の経済学/ジェイコブス(その1):

« ガラスのピラミッド2 | トップページ | 自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟 »